• なつみ

盗撮現場で、私の「強さ」を考える

最終更新: 6月17日




連載エッセイ「ねえねえ聞いて」では、Voice Up Japan 明治支部のライティングメンバーたちが、日常の中で様々なことに揺れ動く自分の感情を、等身大の文章で綴ります。毎月、「ねえねえ聞いて~!」と、話しかけますのでぜひ楽しみながら読んでくださると嬉しいです!



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盗撮現場に出くわすなんて思いもしなかった。

ぽかぽかした日曜日の真昼間、電車に揺られてうとうとしていたとき。座っていた私は目の前のつやっとした透明の黒丸と目が合った。黒丸は同じく黒い紙袋にちょうど同じ大きさであけられた穴から顔を出していて、それを小脇に挟み目の前に立つ男性がいることを認識したときに、ようやくこの黒丸が盗撮のためのレンズだと気づいた。

私の隣には中学生くらいの制服を着た女の子が3人立っていた。ターゲットはこの子たちなんだ、きっと。その瞬間から世界は目の前の盗撮用カメラを持つ男と、中学生たちと、私だけになった。

男の顔から目が離せない。私に気づかれていることに気づいた男はその場を立ち去ろうとしたけれど、私もつい追いかけてしまっていた。隣の駅で男に合わせて降り、「ああもうあの子たちが撮られることはない」とほっとした。束の間、ホームで行方をくらまそうとする男をどうにか目で追いかけながら駅員さんを呼び止める。切れ切れに、


「中学生を盗撮しようとした男がいて」「まだホームにいるから」


すぐに駅員さんは探してくれたけど、恐らく別の電車に乗って逃げたのか見つけることはできなかった。その後は駅員さんに事情を話したが、駅ではどうしようもないらしく交番に行くことになり、そこでもう一度事情を話した。

「もしまた見かけたら、その場で屈強な男の人に伝えてね」

交番で警官から告げられた言葉が、私を慮る気持ちからきたことは十分わかる。それでも、悔しくてたまらなかった。


私が「屈強な男の人」だったら、あのとき盗撮犯を羽交い絞めにでもできたのかな。屈強な私におののいて、あの男は逃げることもできなかった?ホームであの男がポケットに手を突っ込んだ時、刃物でも出てくるんじゃないかと怖かったけど、「屈強な男の人」なら怖いなんて思わなかった?私が「屈強な男の人」じゃないからあの男を取り逃がして、今もどこかで盗撮しているのを許してしまっているってこと?無力感に襲われた。

私が「弱そうな女性」に見えるから、一人じゃ守れない?

そんなはずない、と、思いたい。

実際にその場に立ってみるまで、こんなに周りが見えなくなるなんて知らなかった。けど、見えないなりにも、あのときあの男の顔を凝視してその場から立ち去らせたことで、きっと中学生たちは傷つかずに済んだはずだし、私は「何もできなかった」なんて後悔はしなくてすんだ。

自信を持って言えるわけじゃない。

でもきっと、「屈強な」とか「女」「男」とかに関わらず、怖いものはあるはずなんだ。

「女性だから」できない、なんてはずはない。「屈強な」に連想されるのは肉体的な強さだけど、肉体的な強さを使わなくたって盗撮犯には立ち向かえる。「凝視する」なんて誰だってできる。勇気を出せば「盗撮してる人がいます」って伝えることもできる。肉体的な強さだって手にしている女性はたくさんいる。それがなくたって、みぞおちを殴れば誰だって一瞬はひるむはず。

女性特有の無力感、抱いたことがある人はけっこういるんじゃないかな。けど、案外それって誰かの勝手な押さえつけだったりするかもしれない。できたという事実に目を向けて、できることを探していけば、性別の重しなんて少なくとも自分の心からは追っ払える。

「すぐに動けてすごいよ。」

友人が言ってくれた。うん、たぶんそうだ。怖いものに立ち向かえた私はきっとすごかった。だからこれからだって、声を上げたい。怖くて声を出せない人の代わりに。

屈強じゃなくたって、守れるものはあるはずなんだ。

追記


この後googleで「盗撮 電車」と検索したところ、検索上位には盗撮画像を性的に消費するサイトや、加害者弁護のサイトが表示され、盗撮対策や、実際に目撃した場合の対応を教えてくれるものは「盗撮 対策」など検索の方法を変えないと適切なサイトは表示されませんでした。


また、盗撮画像のサイトにはスカートの中の写真といったいわゆる盗撮画像だけではなく、電車内での寝顔を撮った写真や、カメラと目が合っている写真も載せられていました。「顔にカメラを向けられていただけだから」盗撮ではない、などということはなく、それも全て見知らぬ誰かに性的に消費される対象となりえます。だから、「たぶん服の中は撮られていないからいわゆる『盗撮』ではないよね」なんて思わなくていいんです。それは間違いなく盗撮で、罰せられるべき行為です。


私はこのエッセイで書いたことを経験した後にgoogleの検索画面を見てとてもつらくなりました。


ですが、このような現状を変えるべく活動している団体もいます。

「SEOセックスプロジェクト(キャンペーン · 安心して性知識が得られるサイトを検索上位に出してください! · Change.org)」という学生グループです。

性被害にあったときや、子どもが性知識を得るときに、適切なサイトが検索上位に表示されるよう求めるオンライン署名活動を行っています。署名だって、屈強じゃなくてもできることです。私たちには守れるだけの力があります。


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